歳をとるにしたがって、老後の暮らしから死までを想うと、不安な気持ちになるものです。でも、目をそむけてはいられない大事なことです。
まず、ステージごとに考えてみましょう。死と向き合う前に、病との闘い、ターミナル(終末期)の過ごし方が大きな問題になります。たとえば、命にかかわる病気になったとして、「告知」をしてほしいのか、してほしくないのか。現在では、「告知する」方向に向かっていますが、必ずしも「告知することがよい」ともいえません。自分が告知されて精神的にまいってしまうタイプなら、第三者に「告知しないでほしい」旨を伝えておいてもよいでしょう。
また、ターミナルはどこで送りたいのか。がんなどで治癒の見込みがない場合は、苦痛を緩和することを第一にした「ホスピス・緩和ケア病棟」という施設があります。延命措置や尊厳死は、見逃せない重要な問題です。単に延命を目的とした治療はしてほしくない、植物人間になったら尊厳死を望むなどと考えるのであれば、自分の意思を書面で表明して委託する機関・団体(「尊厳死協会」や「終末期を考える市民の会」など)がありますので、利用するのもひとつです。日本では、法的拘束力はありませんが、医療者・機関に対して何らかの効果はあるようです。
次に、「死」という場面では、自分の遺体をどう処理してほしいのかという問題が出てきます。たとえば、献体して社会に役立てたいという人もいるでしょう。その場合には、生前に手続きしておく必要があります。また、葬儀に関しては、通常の葬儀をしてほしいのか。同じ葬儀でも、立派な葬儀または簡素に済ませたいのか、規模の問題があります。あるいは、自然葬や無宗教葬(オリジナル葬)を望むのか。さらに、最期はどこで永遠の眠りにつきたいのか、お墓についても考える必要があります。
死後の後始末については、前の【Q11】で詳しく説明していますが、さまざまな法手続きや事務処理が発生してきます。
このようにみてくると、とても大変に感じるかもしれませんが、すべての準備を完璧にしておかなければならないというわけではありません。自分の老後から最期、死後のことを考えたとき、あなたの意思を貫きたいことに焦点をあて、対処しておけばよいと思います。たとえば、ターミナルは苦痛を感じないで安らかに過ごしたい。葬儀は親しい人たちだけで行ってほしい。お墓は、両親の眠る家のお墓に入りたい。遺産相続は、○○へ・・・。そういった自分の思いは、まず「覚書」でもかまいませんから、一応、文書にして整理してみましょう。
その後、必要に応じて、書面にして、信頼のおける人(弁護士が最適ですが)に委託したり、「生前契約」の機関・団体を活用して委任するなど、実現に向けての対策を考えてください。遺産相続など、トラブルの起きやすいことは、「遺言」として法的に有効な形にしておいたほうが無難です。できる範囲内で考えましょう。
斉藤弘子・長江曜子著『Q&A 21世紀のお墓と葬儀』より
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