葬儀社に「おまかせ」で決まりきった葬儀を行うのではなく、「自分らしい葬儀」をする―たとえば祭壇やお棺・遺影の設定などに関して、本人の希望をもとにプランニングした葬儀といってよいでしょう。
視点を広げれば、自然葬も、ひとつのオリジナル葬です。海や山に遺灰を撒く散骨だけでなく、最近は「樹木葬」といわれるものも登場しています。参考までに、この樹木葬とは、雑木林(墓地としてきちんと経営許可は取得されているところ)がそのまま墓地となる自然な葬法で、雑木林内の地面を40センチほど掘って、その穴に遺骨を直接収めるという方法で行われます。埋蔵したあとは、その上に山ツツジなどを植えることによって、そこに埋蔵したことを表します。
ただ、一般的に、日本人の多くは、いわゆる仏式といわれる葬儀を行っています。そこで、ここでは、その面からみたオリジナル葬について、お話しましょう。
通常、葬儀社では、葬儀基本セットを設けています。その中には、祭壇、枕飾り、白木位牌などが含まれ、料金によってランクがあります。葬儀を依頼するときは、予算に合わせて、既製服を選ぶように決めてしまう場合が多いものですが、オーダーメイドも可能なのです。たとえば、祭壇は自分の好きな花で飾ってほしい、真っ白な死に装束ではない装いで旅立ちたい・・・独自の葬儀プランをたてることができます。
では、どのようなオリジナル葬が考えられるのでしょうか。実際に行われたケースで紹介すると、「伝統的な祭壇でなく、好きだった花(生花)でデザインした祭壇の生花葬」「ピアノ演奏とシャンソンミニコンサートをとりいれた音楽葬」などがあります。また、黄金バットの作者として知られる加太こうじさんは、生前に自分の葬儀を準備し、「葬儀会場で、なつメロの曲とともに故人自らの声が流れ(自作自演のテープを友人に委託していた)、死に装束でなく愛用のグレーの帽子をかぶった姿で旅立った」そうです。
『楢山節考』を著した作家の深沢七郎さんも、自ら最期の演出をしました。生前のうちに遺影を撮り、葬儀で流すお経をテープで吹き込み、出棺の際に流す曲(自ら弾き語った楢山節)まで準備し、その通りに行われたのです。
加太さんや深沢さんのように、自ら葬儀全般について準備するというのは、なかなかできないことです。そこまで完璧にしなくても、自分がこだわりたいところ、思いを通したい部分をとりいれるだけでも、オリジナル葬になります。もちろん、自分らしい葬儀を行うためには、生前のうちに自ら決定しておかなければなりません。前の【Q13】で紹介した生前契約や生前予約を活用して、予算や内容を相談しながら決定し、委託しておくとよいでしょう。
斉藤弘子・長江曜子著『Q&A 21世紀のお墓と葬儀』より
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