お墓の永代使用権の名義人が夫であった場合、夫の死後、遺言がない場合、内縁の妻であるあなたの権利は、残念ながら守られません。
しかし夫の遺言で祭祀財産(お墓や仏壇)の継承者をあなたと指定していれば、全く問題がありません。指定がない場合は、他の財産の相続と同じことになってしまいます。つまり、法律で、財産の相続権利をもつ人たちの中で協議をして、祭祀財産の継承者を決定します。その際、内縁のあなたは、遺言がなければ当然相続人でないのですから、協議からもはずされます。そしてお墓を継承できないし、お墓にも一緒に入れないということになってしまうのです。
夫の死後ということで解答してますが、あなたの方が先に死亡した場合はどうでしょう。夫は、あなたを自分の名義のお墓に埋葬することは可能です。夫が名義人であれば、夫が許可した遺骨の埋葬は、何ら問題ありません。しかし、妻が許可しないかもしれませんが。
夫と内縁の妻であるあなたとの間で「ぜひ一緒の墓に入りたい」という気持ちがあるのなら、夫の生前に、ぜひとも「遺言」を書いてもらっておいてください。できれば、法的に守られない内縁関係であるなら、”公正証書遺言”にしておくことが大切です。公正証書遺言は、公証人役場で作成してくれます。夫と二人で出かけ、証人二名とともに、費用はかかりますが、正式に作成しておくことです。そして、祭祀財産の継承者を、内縁の妻であるあなたにきちんと指定しておいてもらうのです。そうすれば、誰も、あなたと夫との間を割くことはできません。
一般的には、相続というと、土地、不動産、証券類、現金等のみを念頭に浮かべてしまいがちです。お墓や仏壇といった祭祀財産のことは、ほとんどの人たちが遺言の中にも書き忘れ、死後遺族がもめることが生じてくるのです。
たとえ、正妻とは事実上の離婚状態が数十年続いていようと、あるいは正妻が死亡していても、内縁の妻には法的に相続の権利保証がないことを、きちんと知っておいてください。
斉藤弘子・長江曜子著『Q&A 21世紀のお墓と葬儀』より
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