火葬場は、大気汚染の源のひとつになっている。
もと厚生省の委託をうけた京都大学大学院工学研究科が火葬場の実態調査をしたところ「排ガス中のダイオキシン濃度は、最も高い施設で1立方メートル中24ナノグラム、最も低い施設で0.064ナノグラム」と、有害な「ダイオキシン」が出ていることがわかった。「ダイオキシン」とは、塩素系の物が燃える過程で発生する有害物質で、強い発ガン性や奇形性をまねく性質をもち、環境汚染の元凶の代表格である。
このダイオキシン発生源は、廃棄物焼却炉施設をはじめ、簡易焼却炉などが中心になっているが、意外にも火葬場からも発生しているというのだ。その源は、棺や副葬品、さらに火葬するまでの間、遺体を保存するため棺に入れるドライアイスも見逃せない。不完全燃焼になるとダイオキシンが発生しやすくなるのである。
さて、ダイオキシン類対策特別措置法の排出規制値は10ナノグラムで、その量を超える施設があるわけだが、「人の遺体はゴミではない」ことから、対象になっていない。また、閉鎖命令が出される80ナノグラムに達していないし、全国の火葬場から出るダイオキシン量はごみ焼却場から出るダイオキシン総量の0.1〜0.2%とわずかだ。といっても、今後、高齢化が進んで死亡者が急増すれば、見逃せない問題になる。
そこで、元厚生省は、年50件以上の火葬をする施設を対象に削減対策のためのガイドライン(新設する炉は、排ガス1立方メートル中1ナノグラム、既設のものは5ナノグラム以下)を策定した。
では、具体的にどのような対策が考えられるのかというと、原因のひとつ、副葬品では、次のようなものはダイオキシンを発生させるので要注意だ。
☆ビニール・プラスチック製品(おもちゃ、人形など) ☆化学繊維製品(衣類、布団など) ☆皮革製品(靴やカバンなど) ☆金属製品(腕時計、硬貨、指輪など) ☆ガラス製品(瓶入りの酒、食器など)
その他、書籍や果物、ゴルフのパターなども避けたほうがよい。また、ドライアイスに関していえば、最近、ドライアイスに代わる保存剤が登場した。未来のことを考え、遺族一人一人が地球や環境にやさしい葬儀を考えたいものだ。
斉藤弘子・長江曜子著『Q&A 21世紀のお墓と葬儀』より
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