「戒名」とは、本来、俗世間を離れた者が俗名を改めてつけたもので、仏の弟子になったとみなされて授かるとされていた。一般に、「法名・戒名」と同意語とみられているが、歴史的に見ると、古来は区別なく使われていたが、浄土真宗が普及するとともに、真宗が戒名に対して法名を別に立てるようになった。だが、室町時代以降は、すべてを含めて法名または戒名と呼ばれている。そして、現在は、宗派によって異なり、浄土真宗は「法名」、日蓮宗では「法号」と呼ぶこともあるようだ。
この戒名のつけ方や構成には決まりがあるので、概要を紹介しよう。 「新帰寂 ○○院△△□□信士 霊位」 最初の「新帰寂」は、上文字で、白位牌のときのみ記す。次の「○○」は、院号といわれ、寺院・社会への功績によってつけられる。「△△」は、道号といわれ、人となりを表す。「□□」は、法号といわれ、もとは二文字だった法名のもとの意味を表す。「信士」は、様・殿などと同じ意味である。最期の「霊位」は、真宗や浄土宗では、原則的に書かないことになっている。なお、位階別、年齢別の区分けや男女での違いなどもある。
さて、近年、「戒名料として、100万円もとられた」「生前の付き合いがなくて人柄も知らないのに、勝手に戒名をつけられるなんて・・・」など、戒名をめぐっての問題が取り沙汰されている。日本消費者教会が実施した「葬儀等についてのアンケート」(2000年2月、全国の消費者モニターなど400人を対象)では、「戒名はいらない。俗名でもよい」と、57%の人が回答している。また、金額で戒名に差が出るのは納得できないという声も多かった。また、同調査で、過去五年以内に葬儀に関わった101人に戒名料をたずねたところ、20万円以上30万円未満の人が最も多く、続いて30万円以上50万円未満、50万円以上60万円未満。中には、200万円台という人もあっ たという。
一般人の戒名料に対する批判の声をうけて、全日本仏教会(全国約60宗派加盟の財団法人)は「今後、戒名(法名)料という表現・呼称は用いない」という見解を示した。とはいっても、お金はいらないというわけではない。本来、寺院が受ける金品はすべてお布施であり、戒名をつけることで発生する金銭の授受もお布施になるということなのである。
今後は葬儀や戒名の見直しが進み、俗にいわれる地味葬、戒名不要という声が高まりつつあるようだ。
斉藤弘子・長江曜子著『Q&A 21世紀のお墓と葬儀』より
|